【眼育を学ぼう】こどもの眼の成長を考えた夏休みの過ごし方セミナー 開催レポート

7月5日(水)に「【眼育を学ぼう】こどもの眼の成長を考えた夏休みの過ごし方セミナー」をメディア対象に六本木アカデミーヒルズで開催いたしました。
今回のセミナーでは、近視に関する最新事情や子どもの生活環境について、各分野の専門家と共に考え、夏休みを迎える子供たちに向けて情報発信をしました。会場は40名にのぼる参加者で満席となりました。
*なお、このメディアセミナーでは、子供の生活環境と近視の進行に関する世界での疫学調査を伝え、屋外環境で過ごす大切さを討議しました。バイオレットライト仮説は、屋外環境が近視抑制に働く要因と考えられる照度、波長、調節機能の中の波長に関わる仮説です。




世界で増え続ける近視人口と最先端の近視研究


まずは、本会世話人代表の坪田一男(慶應義塾大学医学部眼科学教室教授)より、



世界で増え続ける近視人口に関して、2015年にNature誌に発表された東アジアの近視人口に関する論文をもとに解説しました。また、病的近視だけでなく、強度近視が失明につながる可能性があること(Association of axial length with risk of uncorrectable visual impairment for Europeans with myopia. JAMA Ophthalmol. 2016.)、屋外活動と近視進行抑制の関係など(Orinda Longitudinal Study of Myopia.Invest Ophthalmol Vis Sci.2007)、最先端の知見を網羅的に解説しました。



続いて、本会世話人の1人である鳥居秀成(慶應義塾大学医学部眼科学教室助教)より、屋外環境で過ごすとなぜ近視抑制に働くのかという仮説について説明がありました。屋外では光の強度が強いこと、屋外には屋内には含まれない波長が存在することが話されました。ひとつの仮説として太陽光に含まれる波長360〜400nmのバイオレットライトが近視進行の抑制に関与する可能性を発見したという自身の研究について解説いたしました(Violet Light Exposure Can Be a Preventive Strategy Against Myopia Progression. EBioMedicine. 2016.)。


外遊びは子どもの成育に重要




「近視の抑制には、太陽のもとで過ごすことが大事」という眼科分野での疫学研究に加え、実際に子供の外遊びの環境がこの50年間でどのように変化してきたかについて、東京工業大学名誉教授の仙田満先生より解説いただきました。

「創造性や社会性、身体性、感性など、さまざまな能力を身につけるために、10歳までに子どもはいろいろな遊びをする必要があります。ところが、近年子どもたちの外遊び時間は激減し、ゲームやTVなどに接するスクリーンタイムが増えています。昔ほどではなくても、なるべく外で太陽のもと自然に触れ合い、みんなで遊ぶ習慣を持つことが大切です」と多くの調査データをもとに語られた仙田先生のメッセージは非常に説得力がありました。


子どもの眼にやさしい生活を始めよう




その後、坪田代表がモデレーターを務め、「子どもの眼にやさしい夏休みの過ごし方」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。ゲストスピーカーとして、医師で弁護士でもあり、政治家として医療や福祉問題に取り組む古川俊治参議院議員と、2人の子どもの母であるモデルのクリス-ウェブ佳子さんにご参加いただきました。



子どもを持つ親400名を対象にした「子どもの視力に関する意識調査」の結果をもとに、ディスカッションを進めました。調査結果では、「子どもの健康管理で気になるもの」を聞いたところ、「視力」が2位に。子どもの年齢別にみると、年齢が上がるにつれて子どもの視力に対する親の関心は高まり、中学生では気になることの1位でした。

この結果に対し、クリス-ウェブ佳子さんは、「視力の低下は、親も気がつきにくいことに加え、子ども自身の自覚も明確でなく、学校の視力検査で言われるまで気づかない。母親として食育への意識はあるが、眼にいい生活習慣について、さらに学びたい」と語られました。

また、同調査によると、「子どもの平日の昼間の屋外活動時間」については、1日2時間以上の屋外活動をしている割合はわずか7.8%でした。
これに対し、古川俊治議員は、「子どもが安全に遊べる場を増やすということが重要。近視が進むと強度近視になってしまう可能性の認識を持ち、眼の健康を守る大切さについても教育という観点から親がお子さんに伝え、予防に取り組んでもらいたいですね」と述べられました。




夏休みは1日2時間の屋外活動を


子どもの近視進行抑制をはじめとした心身の健康のためには、1日2時間の屋外活動が推奨されています。本セミナーの最後に、坪田世話人代表より「子どもの眼にやさしい夏休みの過ごし方」として3つのポイントが紹介されました。


【ポイント1】朝の涼しい時間を活用して、屋外活動をする。

【ポイント2】日差しが室内に入る時間帯は、できるだけ窓を開けて自然光を取り入れる。

【ポイント3】屋外活動は日陰でもOK。夏場はとくに、帽子をかぶる、水分補給をするなどの対策を忘れずに。



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