近視の原因は遺伝因子と環境因子の相互作用により発症すると言われています。アジアに近視患者が多く、欧米に近視が比較的少ないのは遺伝のためと考えられています。一方、近視患者は近年急激に増加しています。日本においても似た状況であり、この急激な近視人口の増加は環境因子によるものと考えられています。関係が推測されている主な因子として、近見作業の増加(携帯ゲーム、コンピューター、スマートフォン、読書など)や屋外活動時間の減少が挙げられています。近見作業については近視と関連があるとしている報告が多いものの、関係を認めなかったとする報告もあります。屋外活動と近視の関係についてはほとんどすべての研究でその存在が確認されており、屋外活動時間が長い程近視進行は抑制されます。
現在有効な近視進行抑制法として注目されているものを表13に示します。近視進行抑制効果や眼軸長延長抑制効果が確認された点眼や眼鏡等の方法論としては、アトロピン点眼、累進屈折力レンズが挙げられます4。コクランレビュー5によると、最大効果を示すものはムスカリン受容体拮抗薬(プラセボと比較してアトロピン点眼が0.80D/年、シクロペントラート点眼が0.34D/年、ピレンゼピンゲルが0.31D/年の近視進行抑制効果があります[表1]。)という薬ですが、近くが見づらいなどの理由により臨床応用が難しいとされています。現在、1%アトロピン点眼を100倍希釈して用いる0.01%アトロピン点眼が注目されており、日本でも近視研究会のメンバーが中心となり多施設共同研究を行っております。
近視進行予防方法 | コントロールの方法 | 近視進行抑制効果 |
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アトロピン点眼 | プラセボ点眼 | 0.80D/年5 |
シクロペントラート点眼 | プラセボ点眼 | 0.34D/年5 |
ピレンゼピンゲル | プラセボ点眼 | 0.31D/年5 |
完全矯正眼鏡 | 低矯正眼鏡 | 0.15/年5 |
累進多焦点眼鏡 (progressive addition lens; PAL)と 遠近両用眼鏡 |
単焦点眼鏡 | 0.16D/年5 |
軸外収差抑制眼鏡 | 単焦点眼鏡 | 0.29D/年(30%)6 |
軸外収差抑制コンタクトレンズ | 単焦点眼鏡 | 0.29D/年(34%)7 |
オルソケラトロジー | 単焦点眼鏡 | 眼軸長0.11mm/年8 |